劉備玄徳は、三国志に登場する3つの国「魏呉蜀」のうち、蜀という国を建国し、初代皇帝となった人物です。
言わずと知れた、横山光輝氏の漫画「三国志」の主人公ですね!
漫画は劉備の一生を追うようにしてストーリーが進行していくため、漫画読者は、主人公である劉備に気持ちが入ってしまい、「劉備頑張れ!」とか、「曹操に負けるな!」とか、「蜀軍勝ってくれ!」といった想いで読み進めているのではないかと思います。
漫画版における劉備は、非常に温厚で国の先行きを憂うような正義感溢れる武将として描かれており、「正義の劉備VS悪の曹操」という構造でストーリーは進行していきますが、実はこの劉備、意外と破天荒な性格で、「本当に正義の味方なの?」って疑問が湧いてくるエピソードが多数あるのです。
劉備は人望があったというのは嘘?!
劉備といえば、その底知れない人望の厚さで多くの人から慕われたというイメージがあります。
漫画を参照すると、関羽・張飛といった一線級の武将たちが若くして劉備のもとに集まり義兄弟の契りを結んだり、曹操に追われて逃げる際に民が劉備に付き従っていたため逃げ切れなかったりと、劉備には人を惹き付ける特徴があるエピソードが非常に多いです。
ところが、史実を参照してみると、劉備が民や武将に慕われていたという事実には特に言及されていないのです。
そもそも、史実では、関羽・張飛は劉備の一配下であって、義兄弟でもなんでもありません。
もちろん劉備に長年付き従っている以上、確かな絆があったのも事実だと思いますが、そうはいっても、曹操陣営には曹操に若い頃から従っていた武将がいるし、孫権陣営には孫堅や孫策の代から付き従っていた武将がいるわけで、特別劉備がすごいということもなさそうです。
それに、劉備に付き従って一緒に逃げていた民も、「劉備についていきたい」という気持ちで付き従っていたのか定かではありません。
これはおそらく、人望があった劉表の子どもである劉琦が劉備と密接な関係だったので、劉琦に付き従うために劉備と行動をともにしたものと思われます。
要するに、史実の劉備は、漫画版の三国志ほど神がかり的な人望のある人物だったとは言い切れないのです。
本当の劉備の魅力は仁義のある破天荒さにあり?!
かといって、史実の中には劉備の人望をうかがい知ることができるエピソードもあります。
ただ、そのエピソードは「劉備の正義の心に引かれた武将たちが集まる」というようなものではないのです。
実は、史実を紐解いてみると劉備という人物は本来、張飛以上に破天荒な男なのですよ。
漫画版ではよく張飛が乱暴を働いて、その行為を劉備が咎めたり、代わりに怒られたりと、そんな役目をかっていますよね。
ところが、これらのエピソードの大半は、史実では張飛ではなく劉備自身が起こしたものなのです。
史実の劉備は、激情家でよく問題は起こすし、自分が覇権を握るために手段を選ばないような一面も垣間見える、ちょっと怖い人なんですよね。
つまり、劉備という人物は聖人君主でもなんでもないのです。
ただ、そんな乱暴者の劉備でも、部下や恩を受けた人物に対しては、一定の恩を感じているようで、筋をとおす面があります。
劉表から荊州を譲り渡すと言われて断ったのも、流浪時代に劉表に助けてもらった経験があるからかもしれないですね。
そんな、破天荒で激情家だけど、しっかり仁義は守るという性格が、部下との関係性を良好に成立させていたのかもしれません。
劉備のような人間味は実社会でも大事
このように、劉備という人物は、正義の満ち溢れた聖人君主というわけではなく、怒るときは本気で怒るし、必要があれば悪いこともする、だけど通すべき筋は通すというような、とても人間味あふれる人なのです。
実社会においても、ただただ良い人よりも、どこか抜けていたり悪い部分もあるけど、しっかり筋をとおすような人の方が、皆から好かれたりしますよね。
史実における劉備の人物像は、実社会でも愛されるちょっと悪いやつってところでしょうか。